本研究は, 自己の私的見解に反する説得行為 (attitude-discrepant persuasion) を行なうことによって生ずる態度変容の量に対して, 行為に対するコミットメントおよび説得行為の結果のフィードバックがどのような影響を及ぼしているかを検討することを目的としている. 被験者は教養課程の心理学を受講している女子大学生50名で, “化粧品の有害性” を強調した説得的なスピーチをテープに吹き込むことを依頼された. 即興演技を必要とし同時に匿名性の保障のないhigh commitment条件においては, 説得的スピーチという意図に即して三人の聞き手から唱導方向へ意見を変えたというポジティブな反応がフィードバックされた場合 (PosFd) に最も大なる態度変容が生起した. しかしながらネガティブなフィードバックであった場合 (NegFd) とフィードバックが与えられない場合 (NoFd) との間には有意差は示されなかった. また, high commitment条件のNoFdとlow commitment条件である朗読条件 (TRc) および統制群の3群間の態度変容量にも有意な差は示されず, 予想したようなコミットメント効果は発現しなかった. 以上の結果は, 私的見解に反する役割演技の際に用いられる論題の特性の吟味の必要性および, コミットメント効果の生起条件についての再検討の必要性を示唆するものであろう.