他者一般に対する信頼は人々を固定した関係の呪縛から解放するとするYamagishi (1995) の「信頼の解放理論」にもとついて, (1) 社会的不確実状況に直面するだけで被験者は「部外者」に対して不信感をいだくようになる, (2) 被験者が「部外者」に対していだく不信の程度は, 別の参加者との間にコミットメント関係を形成した被験者の方が, そうしなかった被験者よりも強いという2つの仮説が提出され, 日米で行われた実験の結果により支持された。これらの結果は, 社会的不確実性を低減するために形成されるコミットメント関係と, コミットメント関係にない「部外者」に対する不信との間に, 相互強化的な関係が存在することを示唆している。すなわち, 他者一般に対する不信は固定した相手との間のコミットメント関係の形成・維持を促進するが, そのことが他者にとっての機会を制約することになり, 他者一般を信頼することがますます不利になる。最後に, これらの知見が現在の日本社会に対してもつ意味について議論されている。