「いじめの被害者にも問題がある」とする見解は, 一般的によく聞かれる見解である。本研究の目的は, 攻撃が「いじめ」として定義される特徴的な形によって, この見解が生じてしまう可能性について検討することにある。本実験では, 以下の2つの仮説が検討された。(1) ある攻撃が, 単独の加害者により行われる場合に比べ, 集団により行われた場合の方が, 被害者は否定的に評価される。(2) ある攻撃が, 一時的に行われる場合に比べ, 継続的に行われた場合の方が, 被害者は否定的に評価される。本実験の結果により, 仮説1は支持されたが, 仮説2は支持されなかった。また予備実験の結果から, 否定的評価と関連する個人差要因として「自己統制能力への自信」と「社会一般に対する不信感」と解釈される2つの信念・態度の存在が指摘された。