近年, ソーシャルサポートと精神的健康に関する研究が盛んに行われている。しかしその一方で, 対人関係は強力なストレッサーにもなり得ることが多くの研究で指摘されている。そこで本研究はストレスの認知的評価・対処理論 (Lazarus & Folkman, 1984) を参考に, 対人関係が精神的健康に及ぼす肯定的/否定的両側面の影響を包括し得る枠組みとして対人ストレス生起過程因果モデルを提唱し, その検証を試みた。まず研究1では, ソーシャルネットワークの大きさがネットワークストレインを規定し, ネットワークストレインが対人ストレスイベントを規定し, 対人ストレスイベントがディストレスのもっとも強い規定因であるという一連のパスが見いだされた。次に, ソーシャルサポートを導入した研究IIでは, ソーシャルネットワークとソーシャルサポートの間に強い関連がみられるものの, サポートのディストレスに対する影響力は対人関係の否定的な側面の影響力に及ぼないことが明らかにされた。二つの研究から, 対人ストレスイベント生起過程因果モデルの妥当性が考察され, このモデルに関する今後の課題・展望が議論された。