大学から社会に足を踏み入れるとほぼ同時に産学官連携分野に身を置くようになった者は,若手と言われる層に属しながらも,産学官連携活動における比較的長い勤続による豊富な経験とそれを背景とする固有の目を持っている.筆者もその立場に身を置く者の一人である.産学官連携が社会の発展に対し果たす寄与の拡大,すなわち産学官連携活動水準の向上を目的とし,筆者の目から意識される本分野における三つの課題認識を示した.第一は,産学官連携分野における活動や実績を評価するための,本質的な指標に関する課題である.第二は,本分野の活動に就く従事者の年齢構成に関する課題である.そして,最後に,従事者の活躍を約束する啓発体系に関する課題である.それらは相互に関連しており,その解決は産学官連携関連諸活動の再認識,全従事者の業務の価値再認識と知識・スキルの向上をもたらす.また,本分野への若手従事者の参入促進と成長を通し,産学官連携そのものの強化につながるものと確信している.提起した課題に対する,全ステークホルダによる議論と将来に向けたビジョンの共有を期待する.