熔接フュームによる発熱の原因を追求するため, 熔接フューム懸濁液に (1) 遠心分離 (2) 室温長期間放置, (3) 煮沸, (4) 加熱乾燥, (5) 凍結乾燥などの処置を施し, これらについて家兎発熱性を観察した.また, 体温調節に関連ある多くの諸因子のうち, 自律神経系およびFe関連酵素 (magnetic, oxidation-reduction, metal enzyme等) との関連の検索を行なうため体温, 脳温, 血圧, catalase活性等を測定した.熔接フユーム懸濁液の水可溶性分画は家兎に対し発熱させる作用はなく, 水不溶性分画は家兎に対し発熱を起こさせ, この発熱を起こさせる因子は, 熱に対し比較的安定であるが加熱による乾燥によってその発熱性を失う (凍結乾燥法による乾燥によっては発熱性を失わない). またLPSは投与後数分の潜伏期をもち発熱, しかも脳温が直腸温に先行して上昇するのに対しフュームの場合は脳温は先行せず, 潜伏期も20分と長く, 肝catalase活性にもやや影響をもたらし, また肝catalase活性低下作用物質によりフュームの発熱が減少するなど, 熔接フューム静脈内投与による発熱は中枢性ではなく, 金属フュームの生体内代謝機構への働きかけが示唆されるような結果が得られた.また, 熔接フューム中の発熱に関連する因子は, 水分不存在状態での加熱によりその構造中に物理的変化を受け, この変性により発熱性が失われるものと思われる.