加齢の影響をオゾンによる肺の損傷およびオゾン耐性について,肺水腫を指標として調べた.4~35週齢にわたるWistar系雄ラットを次のように4群に分けた.I群: 2ppm,O3,3hrに暴露された群(耐性を生じさせる前暴露条件のみの群),II群: 2ppm,O3,3hrに暴露され,一定期間後に5.6ppm,O3hrに挑戦暴露されて耐性の有無を判定された群,III群: 5.6ppm,O3,3hrに暴露された群(肺水腫が相当程度生じるために肺の損傷を評価しうる群),IV群: O3にまったく暴露されていない対照群.I群とII群は,前暴露された後1~2週間以内に屠殺あるいは挑戦暴露されたうえで屠殺し,肺重量を測定した. 対照群(IV群)では肺重量は体重の対数値に比例して増加することが認められた.9週齢以下のラットでは2ppm,O3,3hrの前暴露(II群)では肺重量に対照群(IV群)と差を認めなかったが, 9週齢を越えたものでは若干の肺重量の増加を見た.III群でも9週齢を境に反応量が増大した.すなわち5.6ppm,O3,3hrに暴露されると9週齢以下のラットでは体重の対数値に一定の傾きをもって肺重量が増加したのに対し,9週齢を越えると極端に肺重量が増加し,傾きが異なった.一方II群の結果から,耐性能力は9週齢以下に強く,それ以上のものには耐性能の低下があることが知れた.すなわち若いラットでは前暴露後1~3日間は完全な耐性が生じ,挑戦暴露を受けても対照群(IV群)と有意差のない肺重量であるが,7~14日目では中程度の肺水腫が生じ,部分耐性状態にあった.一方9週齢を越えると完全耐性は認められず,かなり肺水腫が生じ,部分耐性のみが認められるにすぎなかった. 以上の結果を,二酸化窒素や高濃度酸素を用いた同様の実験結果と比較し,肺生化学および形態学的観点より論議した.