近年,均一で薄いシリコン酸化膜が形成できることから,テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4, TEOS)のVLSI, ULSI半導体製造における使用量が急増し, 1992年には1989年の約11倍である22トンが消費された.本報告では, TEOSのガスクロマトグラフによる気中濃度測定法を検討した.共存物質として考慮していかなければならないエタノールとTEOSのピークは,表1の測定条件で十分に分離した.テドラーバッグに0.1~50 ppmのTEOSを調製し測定したところ,良好な直線性があり,許容濃度の100分の1まで測定可能であった.有機溶剤ガス発生装置と動物曝露装置を用いて4 ppmのTEOSを発生させ,テドラーバッグおよび真空採気瓶にて直接捕集し,室温あるいは60℃で保存した場合のTEOS濃度の経時変化を検討した結果, 180分までの追跡で±5%程度の変動であり,実用上の問題はなかった.同様な条件下で活性炭を用いて固体補集を試みたが,本報のガスクロマトグラフ条件下では良好な結果を得られなかった.本報によるTEOSの測定は使用器械器具,手法等の点で簡便で実用的であるが,固体補集法に対しては不十分であり,新たな測定条件の設定を追究する必要がある.