どのような歯科保健行動の継続が20本以上の残存歯に寄与しているかについて,某企業を定年退職した人のうち,ランダムに抽出した60歳以上の男性632名を対象に,自記式質問紙を郵送し, 20歳代からの保健行動を後ろ向きに調査した.回収率は67.1% (424名)であり,有効回答率は97.6% (414名)であった.今回の解析対象者の内訳は60歳代185名, 70歳代172名, 80歳以上57名であった.解析方法として,対象者を保健行動の実施状況別に,保健行動が全然みられなかった群, 20-30歳代に開始し継続した群, 40-50歳代に開始し継続した群に分け,実施状況で残存歯の20本以上とそれ未満に差がみられるかどうかについて検定した.残存歯に寄与すると思われる歯科保健行動13項目を独自に設定し,項目毎に3群間で比較検討した結果,歯科保健行動の早期開始,継続により, 20本以上の残存歯をもたらすのに有効な保健行動として, 1)歯ブラシの交換は2-3ケ月以内に行う, 2)固いものを食べるように心がける, 3)小魚,海藻類を多く摂る,の3項目が示唆された.そのうち晩期からの継続開始でも有効性が示唆された行動は,上記3)の1項目であった.