カルニチンは,神経系を含む全身に広く分布している.その「生理的」機能,つまり,長鎖脂肪酸のミトコンドリア内膜通過のためのキャリヤーであることは充分確立されている.本稿では,主に我々の実験結果にもとづいて,カルニチンが「生理的」機能以外の作用をもち,脳防御作用を持ちうることを論じた.すなわち,マゥスにアンモニア負荷を行うと,けいれんと脳内エネルギー代謝産物濃度の変化(ATPやクレアチンリン酸の低下, ADP, AMP,ピルビン酸,乳酸の上昇など)が見られるが,これらはいずれもカルニチンにより抑制された.また,重篤な脳虚血時の脳内エネルギー代謝産物濃度の変化もカルニチン投与により減少した. D-カルニチンが, L-カルニチンと同様の効果を示したことから,これらはこれまでに確立されているカルニチンの作用とは異なった機序によることが考えられた.カルニチンを含む内因性物質の脳防御作用の可能性は注目に値するように思われる.