取替え式防じんマスクについては,着用者自身がその顔面と面体との密着性の良否を随時容易に検査できるものであることが規定されている.一般的にこのテストは,マスクを着用し吸入口をふさいだうえに,息を吸うことにより内部を陰圧にして.面体との接顔部から空気の漏れ込みを調べる方法(以下,陰圧法と略称)が採用されている.しかしながら,この方法では着用者自身の確認は可能であるが,管理監督者や衛生スタッフ等の第三者によるフィットネスの確認は難しい.そこで,着用者に対する教育指導およびマスクの保守管理に関し良好な状態にある実操業の衛生陶器製造事業場において,労研式マスクフィッティングテスターMT-02を用いてテストを実施し,併せてアンケートを行ない,その実用性について検討を行なった結果,下記事項が明らかとなった. 1)着用者に対し特に指導を行なわず,通常の着用状態で行なった1回目のフィットネステストでは, 50.0%の者が目標値とした漏れ率5%以下を達成していないことが発見できた. 2) 1回目のフィットネステストで目標を達成しなかった者は,衛生スタッフの指導により3回目のテストまでに全員が目標を達成した. 3)目標を達成するまでの指導事項としては,しめひもおよび装着位置の調整で目標を達成した者が88.2%を占めており,フィルターの取替えおよび吸排気弁の取替え・清掃を指導された者はいなかった.またこのことは,衛生スタッフによる着用指導,着用者による日常の点検・清掃および定期的なフィルターの一斉交換といった諸施策の効果であると考えられる. 4)しかしながら,マスク本体の取替え,フィルターの位置修正および接顔メリアスの取替えといった指導が必要だった者が11.8%いたことは,従来の着用者自身による陰圧法テストでは発見できていなかったことであり,この点もマスクテスターによるフィットネステストの効果であると考えられる. 5)着用者に対するアンケート結果では,「マスクテスターによるフィットネステストは防じんマスクの着用および保守管理に役立つ.」といった回答をした者が多く,着用者自身がこのテストの有効性に関し評価しているものと判断される. 6)また管理監督者に対し実施したアンケート結果から,このフィットネステストは単にフィットネスの状態が定量的に把握できるだけでなく,粉じん対策に関する作業者の認識向上にも有効であると考察される.以上より,マスクテスターによるフィットネステストは,防じんマスクの着用指導・保守管理および粉じん対策に関する作業者の認識向上といった点で効果があると考えられるため,今後本事業場では防じんマスク着用者全員に対しこのテストを定期的に実施していくこととなった,