近年,職域においても免疫学的便潜血検査は,大腸癌のスクリーニング検査として広く普及しつつある.しかし感度,特異度又費用効果の面から,何日法が適しているか,又精検効率を高めるにはどうすればよいか等まだ残された問題は多い.我々は1986年より免疫学的便潜血検査(RPHA) 3日法と問診による大腸癌のスクリーニング検査を40才以上の全従業員に対して毎年実施してきた.この7年間に便潜血検査を受検したのは延べ5,386名で,そのうち261名が陽性であった(平均陽性率: 4.8%).大腸癌検診から7年間に12例の大腸癌(早期癌7例,進行癌5例)が発見された.そのうち10例は便潜血検査陽性者から, 2例は問診(家族歴と顕出血)からの精検によって発見された.便潜血検査の感度と特異度はそれぞれ83.3%と95.3%であったが,進行癌に限れば感度は100%であり診断の精度としては満足すべき結果であった.又,発見大腸癌の75% (9/12)は55才以上の者であった. RPHA 3日法のうち1回のみ陽性を示した174名からは, 1例のみの大腸早期癌が発見され,陽性反応適中度は0.6%であった.一方, 2回以上陽性を示した63名からは9例の大腸癌が発見され,陽性反応適中度は14.3%と1回のみ陽性の場合に比し,きわめて高率であった.以上の結果より職域における逐年検診において,効率的な精検を実施するためには,この2回以上の陽性者(high Risk群:全陽性者の24%)に対してはただちに精検(注腸レントゲン検査又は内視鏡検査)を実施し, 1回のみの陽性者(low Risk群)に対しては再度RPHA 3日法を実施し,その陽性者のみ精検を実施するという方法が妥当と考えられた.これによって,要精検者を約50%減らすことも可能である.以上RPHA 3日法は感度・特異度ともに良好で,職域における大腸癌のスクリーニング検査として高い診断精度を示すとともに,逐年検診を前提とすれば, 2回以上陽性者を中心に精検を実施することで,精検効率を高めることが可能であると思われた.