近畿圏の6国公立大学医学部に在籍する5年次生を対象に,卒後の希望進路と産業医業務に関する意識調査を行った.有効な回答が返却された368名(有効回答率: 68.4%)について,産業医志向とその関連要因を検討した. 1)卒後に産業医を志望するものは1名(0.3%)であったが,産業医を進路として考えたことがあるものは24.2%であった.産業医志向は,女子と26歳以上の男子に高く,また産業医志向は医師過剰への不安と関連していた. 2)産業医志向のないものでも,産業医業務に対する否定的な回答は少なかった.また,全体の88.3%が,産業医を含めて卒後の進路についての情報が不足していると回答していた. 3)産業医志向の有無によって,産業医業務に従事する場合の要件が異なり,産業医志向のあるものでは会社の受け入れ体制,ないものでは臨床との並行業務の回答が最も多かった. 4)以上の結果と考察を通じて,医学部学生への産業医関連の情報提供,産業医養成のための卒後研修制度の拡充は,産業医の確保に重要であると考えられた.