こんにゃくを軟化剥離し, 溶解を起こす原因菌について検索した結果, こんにゃく26件中9件, しらたきの浸漬液1件中1件よりJ-agar培地上で同一集落形状を示すグラム陽性のやや湾曲した無芽胞小桿菌を分離した. 本菌は, 鞭毛はなく非運動性で, カタラーゼ陽性, 熱に対する抵抗性はなく, 65℃10分の加熱で死滅した. 以上により, 溶解菌はこれまでに知られていた Bacillus 属ではなく, coryneform bacteriaに属するものと推定された. 分離菌株を滅菌こんにゃくに接種し, 30℃で培養したところ, 培養3日頃から菌発育部位にこんにゃく溶解が観察された. 本菌の発育温度域は12~39℃, 至適発育温度は27~32℃, 発育pH域はpH6.5~10.0, 至適発育pHはpH7.5~8.5であった. また分離菌をJ-broth (pH7.3) に接種して3日間振盪培養を行った後, この培養上清に滅菌こんにゃくを入れ30℃に保存した場合, 約2時間でこんにゃくの表面に剥離が始まり, 6時間後には完全に溶解した. 以上の結果から培養上清にはこんにゃくを溶解する酵素が産生されているものと推察された.