本論文では,ユーザがある単語を思い出せずに断片だけを発声しても,システム側がその残りを補って入力することを可能にする「音声補完」という新しい音声インタフェース機能を提案する.既にテキストインタフェースでは,ファイル名の入力等で補完の概念が広く受け入れられているが,音声では効果的な補完機能は提案されていなかった.我々は,ユーザが単語発声途中に有声休止(母音の引き延ばし)によって言い淀むと,それを含む補完候補の一覧を見ることができるインタフェースを構築し,労力をかけずに自発的に補完機能を呼び出しながら音声入力することを可能にする.実際に,有声休止検出機能と補完候補作成可能な音声認識機能を備えたシステムを実装して運用し,音声補完の有用性を確認した.本研究での有声休止は,従来の言語情報中心の音声入力インタフェースに導入された,新たな非言語情報のモダリティと捉えることができる.