本論文では属性文法に対する新しいデバッグ手法を提案する.これまでに,デバッガがユーザに対して属性の値が正しいかどうかを問い合わせることでバグの位置を特定する,属性文法の系統的デバッグ手法がいくつか提案されてきた.また,系統的デバッグ手法を理論的に一般化し,これを定式化することにより,複数のデバッグ法を統一的に扱うことができるようになった.しかしこれまで,デバッグの効率に関する考察はあまり行われていない.これまでのデバッグ法では,デバッガの質問の選び方によっては,質問の回数が増えるなど,デバッグの効率が悪くなってしまう場合が多かった.特に,実際に属性文法記述をデバッグする場合には,属性の依存関係が複雑になり,かつ,属性の数も多くなるため,デバッグの効率は重要な問題となる.本論文ではこのような問題点を解決するために,系統的デバッグ法の一般化の理論を拡張する.この拡張は,属性の依存関係の逆支配関係を利用し,属性の誤りの影響範囲を詳しく調べることによって,より厳密なバグの絞り込みを可能にするものである.さらに,この拡張された理論を利用したデバッグのアルゴリズムを提案する.このアルゴリズムを利用することによって,デバッガのユーザに対する質問の回数を減らすことができ,ユーザへの負担を軽減し,デバッグの効率を向上させることができる.また,このデバッグ法を取り入れたデバッガを実装し,このデバッグ法の有用性を確かめた.