複合現実感はユビキタス環境を実用化するために重要な技術の1つである.一般に複合現実感を実現するためには,複雑な画像認識アルゴリズムと仮想オブジェクトのスーパーインポーズ処理が必要である.既存の複合現実感のためのミドルウェアは,それらを抽象化し,容易な複合現実感アプリケーションの開発を可能にしている.しかし,ユビキタス環境において複合現実感を実現するには,処理の分散化や,ユーザ状況の認識,状況に適応したアプリケーションの再構成などの複雑な問題が存在する.これらの問題は既存のミドルウェアでは考慮されていない.そこで本稿では,ユビキタス環境における複合現実感に必要な処理を抽象化し開発者の負担を軽減するミドルウェアを提案する.本ミドルウェアを利用することにより,ユビキタス環境における複合現実感特有の複雑さを考慮しないアプリケーション開発が可能となり,複合現実感を容易にユビキタス環境へ適用することが可能となる.