コンパイラでは,機械語の目的コードを生成するだけでなく,実行させたときにその目的コードが効率良く実行できるように,様々な変換を行う.これを「最適化」という.最適化の方法としては,従来は中間表現の上で変数の定義と使用のデータの流れの解析を行う方法が使われていたが,最近は静的単一代入形式というものを用いた最適化の方法が注目を浴びている.静的単一代入形式(SSA形式)は,すべての変数の使用に対して,その値を定義(代入)している場所がテキスト上1箇所しかないように変数の名前替えをした中間表現の形式である.この性質を利用することにより,いろいろな最適化が見通し良く,容易に行えるようになる.本稿(導入編)では,SSA形式のあらまし,通常形式からSSA形式への変換,SSA形式から通常形式への逆変換について,解説する.