Cプログラム用のリファクタリングツールなどの実装にはCプログラムの正確な解析が必要となる.しかし,C前処理系(CPP)のため,Cプログラムの正確な解析は著しく困難になっている.Cプログラムの正確な解析には,CPPの処理前後のマッピング情報が必須である.従来は既存のCPP(例:Cpplib)を拡張して,このCPPマッピング情報を得ていた.しかしこの手法はCPPの実装に強く依存するため,保守や移植のコストが大きいという問題があった. この問題を解決するために,我々は新しい追跡子方式を提案する.追跡子方式ではCプログラムにXML風の追跡子を自動的に埋め込み,既存のCPPをそのまま手を加えずに前処理に用いて,最後に結果中の追跡子を解析してCPPマッピング情報を得る.このため追跡子方式には低い保守・移植コストと高い適用性という,従来方式には無い大きな利点がある.我々は追跡子方式を用いたCPP解析器のプロトタイプであるTBCppAの実装に成功した.また,TBCppAをgcc-4.1.1(約63万行)などのソースコードに実験的に適用した.この予備評価に限るが,移植性の高い方法でCPPマッピング情報を得る方式として,機能と性能の両面で追跡子方式は有用という結果を得た.