マルチスレッド環境において,ごみ集め開始時にプログラムが長時間停止することを避けるために,スレッド再開バリアを提案する.従来のスナップショットごみ集めでは,ごみ集め開始時に全スレッドを止めて,全スレッドのスタックを一度にスキャンする.そのため,スレッド数が増えるとごみ集め開始時にプログラムが長時間停止してしまう.本論文では,ごみ集め開始時にはカレントスレッドのスタックのみをスキャンし,他のスレッドについては後から少しずつスキャンする方式を提案する.この方式では,まだスタックがスキャンされていないスレッドが実行されるのを防ぐため,スレッドの実行再開にバリアを張り,そのようなスレッドの実行を再開しようとした時にスタックをスキャンする.スレッド毎にスタックをスキャンするごみ集めはAzatchiらも提案しているが,提案するごみ集めはこれと比べてごみ集め開始タイミングを決定しやすいという特徴がある.この方式を実装して実験したところ,スレッド数が増えてもプログラムの停止時間はほとんど増えないことが確認できた.