ソフトウェアは数多くの機能的関心事,すなわち,特定の機能要求を実現するためのソースコードの集合から構成される.1つの関心事に属するソースコードは,通常,複数のモジュールに分散しているため,開発者がある関心事を理解するには,その関心事に含まれるソースコードを探し,それらの間の制御フローやデータフロー情報を調べる必要がある. 本研究では,開発者が注目しているプログラム要素群に対し,それらのプログラム要素に依存関係を持つ他のプログラム要素を探索し,要素間の関係を関心事グラフとして可視化する手法を提案する.具体的には,プログラム依存グラフの探索に基づくプログラムスライシング手法に対して,プログラム構造やキーワードマッチに基づく経験的な指標を導入し,関心事に含まれない可能性が高い要素に対するグラフ探索を打ち切るよう拡張する.Javaを対象とした解析ツールとして本手法を実装し,従来のプログラムスライシング手法に基づく手法との比較実験を行った結果,人間が作成したものにより近い関心事グラフを抽出していることを確認した.