我々はSC言語処理系という,S式ベースの構文を持つC言語を利用することにより,C言語への変換による言語拡張の開発を支援するシステムを開発している.本論文では,SC言語処理系による言語開発の事例を通して明らかになった問題点を示し,それを解決するために行ったシステムの改良,特に,言語間の変換を定義する既存の変換フェーズ(変形規則セット)を拡張するための追加機能について述べる.Common LispのCLOSと動的変数を利用して,同一のコードから適用される変形関数を動的に決定する仕組みを採用したことにより,多くの言語拡張はベース言語の恒等変換や既存の変換との差分のみを記述して実装できるようになった.また,様々な拡張言語の実装で共通してよく利用される変換フェーズを,C言語への変換全体の一部として組み込むことも容易になった.実際,本処理系により,マルチスレッディング,ごみ集め,負荷分散などの機能を備えた複数の拡張言語を実装してきた.本論文では特にマルチスレッディング機能を例として提案機構の有効性の詳細を示す.