本論文では,ソースコードインスペクションツールのためのソフトウェアアーキテクチャの設計と進化について議論する.ソースコードの欠陥検査や品質向上に対する要求は多様であり,それらの要求を実現するインスペクションツールには,さまざまな要求に応じた変更やカスタマイズを可能とする柔軟性が必要となる. 我々は,OJL(On the Job Learning)と呼ぶ産学連携の開発プロジェクトを通じて,Javaソースコードに対するインスペクションツールJCI(Java Code Inspector)を開発してきた.その中で我々は,解析性,変更性,試験性,効率性を向上させるために,JCIのソフトウェアアーキテクチャを,GoFのデザインパターンを組み合わせて適用することで設計した.JCIの開発開始から3年あまりにわたり,解析処理の高度化や,検査精度の向上,空間効率の改善など,さまざまな機能追加や保守を重ねてきた.本稿では,これら変更要求や機能追加要求への対応を通じ,デザインパターンを用いて設計したJCIのソフトウェアアーキテクチャが,変更の影響を最小にとどめながらソフトウェア構造の改善と洗練を行うための保守の基盤として有効に機能していることを示す.