近年,組込みシステムの分野においてもマルチプロセッサシステムの利用が進んでいる.組込みシステムはシステム毎に求められる性質が異なり,リアルタイム性が要求されるシステムや,スループットが求められるシステム,両方の要件を同時に要求されるシステムも存在する.既存の組込みシステム向けマルチプロセッサ用RTOSは,いずれか一方の要求を満たす実装がされている.そこで,TOPPERS/FMPカーネルは,両方の要求を満たすよう設計実装を行った.リアルタイム性を確保するため,RTOSが自動的にロードバランスを行うことはしない.しかし,スループット向上と,システムに最適なロードバランス方式をサポートできるように,アプリケーションからの要求(APIによる要求)によりタスクを実行するプロセッサを変更するマイグレーション機能を提供する.本稿では,TOPPERS/FMPカーネルのマイグレーション機能の設計と実装について述べる.設計・実装したマイグレーション機能を使用して,アプリケーションレベルで複数のロードバランス方式を実現できることを確認した.