近年,AR技術・VR技術・ロボット技術など科学技術の進展に伴い,テニス・ゴルフ・習字・楽器演奏・歌唱などの身体動作のスキル(本研究では技能と呼ぶ)の習得を補助する学習システムが多数提案されている.これらのシステムは習得したい技能の模範や学習者の誤りを提示することで,難度の高い技能を短時間で習得でき,学習効率の向上に寄与している.特に,動作直前あるいは動作中の模範の提示は,学習の敷居を下げ学習者に成功イメージを体験させられ,モチベーションの維持に重要である.しかし,システムをいつでもどこでも利用できるような状況ではないことがあるため,最終的にシステムの支援がなくとも技能を使えるようになっている必要がある.既存の学習システムの多くは,システムからの離脱についてはほとんど考慮してこなかった.そこで,本研究では,システム補助からの離脱を考慮した学習システムの構築をめざす.本論文では,既存の学習システムを分析し,離脱の方法や離脱の適用タイミングについて議論する.また,ピアノ演奏を対象に本論文で提唱している「システムからの離脱」というアプローチを実際に適用し,その有用性を検証した.