ロールシャッハ・テストに関する現象学風の解釈可能性を提示したものである。この種の試みはあまり例がなく、とくに「代替可能な視点」を提供する哲学的議論を具体的な臨床現場との接点において導入する試みとしては評価できる。しかし、設定した問題(辻(1997)の批判的解釈)の短い射程内に留まっており、原著作の具体的問題点の提示と解決、論文自身の立っている立場や導入している議論の広範囲への展開可能性についての表明が希薄であり、議論の内在的な発展が望まれる。