本稿は広汎性発達障害児に対する、約2年(66 回)に渡る心理療法の研究報告である。器質的な疾患の可能性も考えられる広汎性発達障害児に対して器質的な疾患ではなく、言語的、非言語的コミュニケーションの困難さと二次的な心理的な問題に焦点をあてて心理療法を行った。治療の経過は7期に分け、その展開の中で行われた心理検査を用いたアセスメント、セラピストのかかわり、クライエントとの間で表現されたものの意味について報告し,考察した。特に、廃線や線路の分岐等の鉄道のイメージは、クライエント独自の内的世界を適切に表現するものであり、そのイメージの共有とクライエントへの共感が全心理療法の過程で継続している。心理療法を継続した結果、子どもが本来もっている能力が発揮され、現実の生活に適応できるようになった。本報告を通して、広汎性発達障害の子どもの二次的な心理的問題には、心理療法が果たせる役割が大きいことを実証した。