永澤護はネグリ=ハートの所説に依拠しつつ、グローバル資本主義下における<協働>の構成について論じている。すなわち、ネグリ=ハートの<帝国>、<マルチチュード>の概念を駆使して<協働>の構成を探求している。ただし概念構成はそれほど明確に提示されていない。永澤は<帝国>を「無数の差異を包み込み、無際限に階層序列化する統御装置」としてとらえている。この装置は個々人を分断していると主張している。その<帝国>の中で<協働>の可能性を探るのが主題である。「<協働>の構成は、グローバル資本主義化におけるわれわれの生存にとって切迫した課題である」と主張している。分析枠組みは複雑多岐にわたるが、取り上げられる実践事例は明快で分かりやすい。論理の迷宮に絡められた評者の評価は+1である。