試験紙を用いた尿潜血検査は職域の定期健康診断においてごく一般的に実施され, 多くの人が陽性と判定されている. 尿潜血の原因は多岐にわたるものの, 多くは放置可能である. ただし, 稀ながら尿路悪性腫瘍の初発症状の可能性があるためその対応に苦慮する. 1999年から2002年までの4年間の健康診断結果およびその事後措置を通して, 尿潜血陽性者における特徴とその対処方法を検討した. 対象は某鉄鋼製造事業場の男性従業員(99年:1,135名, 00年:1,077名, 01年:994名, 02年:945名)である. 各年度における尿潜血の陽性率はそれぞれ8.6, 7.6, 7.8, 8.3%であった. 尿潜血を目的変数に, 健康診断結果から得られた項目を説明変数に多重ロジスティック回帰分析を行ったところ、年齢と尿蛋白が有意で, 高齢者ほど, 尿蛋白が陽性なほど潜血が出やすいという結果であった. 一般的に, 尿潜血の原因が尿路悪性腫瘍であれば, 経過中に肉眼的血尿をきたす. したがって, 尿潜血のみが繰り返されている場合には悪性腫瘍の危険性は低いと考えられる. この点を重視して尿潜血対応プロトコールを定めて対応した. その結果, 精密検査へ紹介した人数は4年間で6名で, 5名を泌尿器科, 1名を腎臓内科へ紹介した. 尿路悪性腫瘍を含め, 治療を要する疾患は発見されなかった.