フィルムコンデンサー製造工場の溶射工程に従事する作業者の金属皮膚炎の原因を究明するため,1. 金属粉体の曝露を受ける作業者に対しアンケート調査を実施し,2. この金属粉体の成分を分析し,3. さらにこの金属粉体とその成分のパッチテストを行った.アンケート調査の結果,26名中12名(46.2%)が皮膚炎を経験していることが判明した.症状は掻痒感や掻痒感を伴った紅斑・丘疹が主だった.金属粉体の分析の結果,酸化銅は検出されなかったが,本来溶射材料には含まれないニッケルが検出された.皮膚炎を呈した作業者1名は2.5%硫酸ニッケルにて陽性となった.数名は5%硫酸銅にて刺激反応を示した.上記結果から,この皮膚炎は銅による一次刺激性皮膚炎もしくはニッケルによるアレルギー性接触皮膚炎,あるいはこれらが混在している可能性が高いと考えられた.皮膚炎を予防するため,局所排気装置の改善,発汗を抑えるための室温の管理,さらに作業者に対して手洗いの重要性を教育するよう指導した.これらの対策がなされた後,皮膚炎の発生は抑えられ,また治療を必要とする作業者はいなくなった.