生活習慣病(糖尿病)予防活動の一貫として,事業場における比較的健康レベルの高い人々を対象に,視覚媒体を用いた集団指導の介入により,その効果を明らかにすることを目的とした.視覚媒体とは糖尿病に関するスライド,血液サンプル,血管年齢測定などを指し,糖尿病や生活習慣に対する関心,知識,理解度を高める集団指導を実施した.集団指導の実施は視覚媒体あり群,視覚媒体なし群ともに行っているが,視覚媒体を用いたか否かでその介入効果を比較検討した.研究に同意し,協力の得られた従業員1,054人(平均年齢43±11.2歳)に対し,ランダムに割付を行い,対象群・比較対照群とし,2ヵ月後まで追跡フォローできた190人を解析対象とした.その結果,視覚媒体使用の効果として,糖尿病や生活習慣に対する関心度,理解度は増し( p <0.05),知識の継続性は視覚媒体なし群より学習低下度は少ない傾向を示した.一方,介入による身体的データの改善には至らなかった.対象群・比較対照群とも事前の健康診断データが正常で範囲内であったこと,フォロー期間が短期間であったことなどがその理由と考えられる.結論として,比較的健康レベルの高い人々に対する集団指導の効果として,視覚媒体を用いることは意識変容につながるといえる.