全身振動曝露低減のための港湾フォークリフトの評価:辻村裕次ほか.滋賀医科大学予防医学講座―全身振動曝露に起因すると考えられた腰痛が日本の港湾フォークリフト運転労働者に多発していたことをこれまでに報告した.全身振動曝露低減のために,実際に港湾で使われていた,1982年から2000年にわたる製造年式のフォークリフトに対して,欧州標準化委員会が産業車両における全身振動評価方法として定めた規格を応用した走行試験により,全身振動の測定と車両の評価を行い,座席の振動減衰能を主とする様々な全身振動に関する要因を検討した.その結果,(1)座席は鉛直方向振動を減衰していない,(2)フォークリフトはその座席を含めて,全身振動減衰に関して改良されているとはいえない,(3)座席サスペンションの運転者体重への調節機能不全の車両が修理されないまま作業に用いられており,また実際の作業中には調節が不可能な調節方式が採用されている,(4)健康影響の大きい周波数域において,座席は鉛直方向振動を減衰していない,ことが明らかになった.フォークリフト運転者の全身振動曝露低減による腰痛予防のため,フォークリフト,特にその座席は早急に改善されるべきであると結論付けられる.(産衛誌2005; 47: 55-66)