国内の情報サービス産業のコールセンターにおいて組織特性を含めた労働職場環境特性が,ストレッサーとして「組織の健康」と位置づけた労働者の心身の健康度及び職務不満足,離職意向に及ぼす経年的な影響を検証することを目的とし,2001年及び2002年7~8月に自記式質問紙による縦断的調査を某企業において実施した(有効回答率96.2%,92.0%).対象事業所の8割を占める技術職のテクニカルサポートスタッフのうち両年のデータに不備のない296名を最終的な分析対象とした.29項目7尺度の「労働職場環境特性」の尺度を「組織特性」及び「作業・職場特性」の尺度に分け,それらの経年的変化を含め,「組織の健康」の4変数との関連性を階層的重回帰分析にて検証した.結果,「仕事の量及び質的負荷」の悪化が精神的健康度と,また「上司のサポート」の悪化は全ての従属変数と有意な関連性が認められた.一方で,「組織特性」の悪化が,蓄積的疲労兆候及び職務不満足の増大に影響し,それらの上司及び同僚のサポートの悪化との間接影響も明らかになった.「組織特性」を含めた労働職場環境特性への対策が,「組織の健康」すなわち,労働者の心身の健康度のみならず,組織のモラールや生産性との関連性が指摘される職務不満足への改善の有効性が示唆された.