職場における浮遊微生物濃度の測定と細菌叢の解析:石松維世ほか.産業医科大学産業保健学部第1環境管理学―シックビルディング症候群(SBS)やアレルギーの原因と考えられる浮遊微生物の検出方法は培養法によるものが多く,浮遊微生物濃度や構成微生物の把握などに限界がある.本研究では,ろ過捕集法-蛍光二重染色法によって職場の室内浮遊微生物濃度測定を継続的に行い,総菌数濃度とエステラーゼ活性を持つ生理活性保有菌数の割合について調べた.常時温湿度調整されている実験室では,総菌数濃度と湿度には関連はなかったが,使用頻度が低く空調機の運転頻度も低い会議室では,捕集時期により総菌数濃度の変動が見られた.また,生理活性保有菌割合の変動と測定前における降雨の有無には,有意に関連があった(n=15, p <0.05,Mann-Whitney検定).本方法により生理活性保有菌を含めた浮遊菌数濃度の測定が可能であったことから,この方法は室内浮遊微生物のリスク評価の一助になると思われた.一方,捕集した浮遊微生物中の細菌類について,16S rDNAの塩基配列に基づいた同定を行って気中細菌種の構成を調べたが,測定した実験室,会議室では門レベルでの構成細菌叢にはほとんど差が見られず,またヒトに対して強い病原性を持つ菌種は見出されなかった. (産衛誌2007; 49: 39-44)