個別ケアに取り組む高齢者介護施設の個浴の入浴介助における腰部負担および介護職員と利用者の満足度:冨岡公子ほか.大阪府立公衆衛生研究所生活衛生課―介護保険制度が導入されて以降,従来型の集団処遇から個別ケアへの移行が求められ,高齢者介護施設においても,これまでの特殊浴槽や大浴槽を使用した入浴介助から,家庭的な浴槽に入所者ひとりひとりを入浴させる入浴介助(個浴)が普及しつつある.個浴による入浴介助作業時の介護職員の負担に関する調査はこれまで行われていない.そこで,個浴の入浴介助を実践している介護現場において,上体傾斜角と表面筋電図を測定して腰部の負担を検討した.また,介護職員と利用者双方の主観的評価も実施した.その結果,1人あたりの入浴時間は約35分であった.浴槽の出入りにリフトを使用すると,前傾姿勢と筋負担が少なくなり,作業負担軽減に有効であった.着脱衣や洗身時に,利用者が座位姿勢の状態で介護職員が下肢側の着脱衣や洗身を行う際や,車椅子のフットレストを設定する際には,前傾姿勢と筋負担が大きくなり腰部負担度が高くなっていた.満足度については,浴槽の出入りを人の手による介助で行った場合より,リフトを使用した場合が一番良好であり,自覚的作業強度についてはほとんど変わらなかった.今後,介護補助具や介護機器を有効に利用した,介護職員・利用者ともに安全で満足度の高い介護方法の重要性をアピールする必要があろう. (産衛誌2007; 49: 54-58)