女性の静止立位作業による血圧低下の実態調査:加部 勇ほか.古河電気工業株式会社衛生管理センター―生産性効率化の代表的な方法の「ジャスト・イン・タイム方式」は,コスト削減に貢献するが,作業者に立位作業を強いる.本調査は,女性の静止立位作業における血圧低下の実態を調べ,その発症予防に役立てることを目的とした.某通信機器製造事業場で働く女性静止立位作業者12人(平均年齢±標準偏差;32±14歳),同じ職場で働く男性静止立位作業者6人(同;30±4歳),女性歩行作業者10人(同;27±7歳)と女性事務作業者9人(同;31±5歳)の4群を対象に,産業医による問診,起立試験ならびに作業中15分間隔で連続的に血圧測定を行った.起立試験の結果では,4群間で差はみられなかったが,全ての群で安静臥位平均脈拍に比べ,起立時平均脈拍が有意に上昇していた.女性作業者数人に起立時の脈拍上昇がみられなかった.作業中の連続血圧測定結果では,女性立位作業者群の血圧低下者は,SBPが12人中7人(75%),DBPが12人中11人(92%)と女性事務作業者群(SBPが9人中0人(0%),DBPが8人中2人(22%))に比べて有意に多かった.男性立位作業者群および女性歩行作業者群においても半数以上が低下していたが,有意差はなかった.起立試験で起立性低血圧をみとめた8人全員が,作業形態に関わらずABPMで血圧低下をみとめたことから,起立試験を行うことで,連続静止立位作業中に血圧低下を起こすハイリスク者をスクリーニングできる可能性が示唆された.長時間の静止立位作業が作業中の血圧低下をきたす可能性が示唆され,その機序については,静脈還流減少と神経原性の両方が推察された.作業中の歩行運動,一連続あたりの立位作業時間の短縮,弾性ストッキングの着用などにより下肢のうっ血を防ぐことで,静脈還流量を保ち,作業中の血圧低下を防ぐことが期待される. (産衛誌2007; 49: 122-126)