大阪府内新設介護老人福祉施設における筋骨格系障害の実態―施設責任者の把握状況とアンケート調査による職員の訴え―:冨岡公子ほか.奈良県立医科大学地域健康医学教室 ―新設介護老人福祉施設で働く職員の健康問題について,施設責任者からの聞き取り調査結果と施設職員のアンケート調査の結果を検討することを目的に調査を行った.聞き取り調査の対象は介護老人福祉施設7施設の責任者で,アンケート調査の対象は,聞き取り調査の対象となった施設に勤務する全職員362名(介護職258名,介護職以外104名)で,回収数は299名,回収率は82.6%であった.施設の責任者に『腰や頸肩腕に痛みなどを訴えている介護職員の有無』を尋ねた.腰痛に関して1施設は『介護職の8割』と回答,それ以外の施設は『数名程度,多くとも5名』と回答した.アンケート調査の結果,介護職員の訴えは,現在腰痛あり70.0%,ここ1ヶ月腰痛あり81.6%,現職後腰痛あり88.6%であった.頸肩腕障害に関しては,腰痛よりさらに施設の責任者の関心が薄かったが,介護職員の6割以上が過去1ヶ月に頸肩腕部に痛みを訴えていた.介護職は職業性腰痛の教育については,『受けたことがない』と回答した者が73.1%であった.負担の少ない安全な介護動作の教育については約半数の49.0%が学校で受けており,受けたことがない者が27.0%であった.女性職員(介護職の77%,介護職以外の73%)における検討では,喫煙者,夜勤が介護職に有意に多く,休憩時間がとれない,時間外勤務ありが介護職以外に有意に多かった.腰痛訴え率の検討では,現在腰痛あり,現職後腰痛あり,および現職についてから腰痛を初発する者が,介護職以外より介護職において有意に高かった.調査対象の全施設では,腰痛の特殊健康診断は実施されていなかったが,職員の筋骨格系障害の実態を責任者が把握する一つの手段として,特殊健康診断は有効ではないかと考えた. (産衛誌2007; 49: 216-222)