新設介護老人福祉施設における介護労働者の腰痛問題に関する検討:冨岡公子.奈良県立医科大学地域健康医学教室 ―改善が進まない介護労働者の腰痛問題の対策を進める場合,重度の腰痛を優先して検討すべきだと考え,新設介護老人福祉施設で働く介護労働者を対象に,重度の腰痛に関与する労働要因を検討することを目的にアンケート調査を行った.アンケートは,大阪府内介護老人福祉施設7施設の介護職258名に配布し,214名から回収した(平均年齢:28.8歳).解析対象は212名(男性59名,女性153名)とした.介護作業に伴う精神的および身体的作業負担について独自に作成した22の質問項目の因子分析を行った結果,16項目5因子が抽出され,第1因子は“利用者の特性・ADL”,第2因子は“利用者からの暴力”,第3因子は“職場内のコミュニケーション”,第4因子は“作業環境の問題”,第5因子は“利用者とのコミュニケーション”と解釈された.「最近1ヶ月にいつも腰痛あり」を重度の腰痛と定義して,重度の腰痛に関与する労働要因について多重ロジスティック回帰分析を用いて検討した結果,性と在職年数を調整した調整オッズ比が,第1因子“利用者の特性・ADL”の『体重が重い』で6.63(95%CI: 1.71-25.75)と有意に増加した.介護労働者の腰痛対策として利用者の特性・ADLに応じた介護労働者の配置や介助補助具が必要なことが示唆された. (産衛誌2008; 50: 86-91)