「自覚症しらべ」による連続夜勤時の疲労感の表出パターンの検討:久保智英ほか.労働安全衛生総合研究所 ―本研究の目的は,「自覚症しらべ」を用いて連続夜勤時の特徴的な疲労感の変動パターンを明らかにする事であった.10名の健常男性(平均年齢±SD;22.9±3.2歳)が本実験に参加した.参加者は9日間連続して実験室に宿泊し,以下の条件を経験した;適応夜(0:00-7:00),模擬日勤(10:00-18:00),基準夜(0:00-7:00),4連続模擬夜勤(22:00-9:00)および昼間睡眠(12:00-18:00),3夜の回復夜(0:00-7:00)と2日の模擬日勤(10:00-18:00).それぞれの模擬勤務中に,参加者は英文転写課題(30min),機能検査(20 min),小休憩(10 min)を1時間ごとに実施するよう要求された.疲労感は,2002年に日本産業衛生学会・産業疲労研究会が作成した「自覚症しらべ」を用いて評価した.この質問紙は,5要因にカテゴリー化された25項目の主観的な疲労の訴えから構成されている:ねむけ感(I群),不安定感(II群),不快感(III群),だるさ感(IV群),ぼやけ感(V群).回答者は感覚の強さに応じてそれぞれの項目を「まったくあてはまらない」,「わずかにあてはまる」,「すこしあてはまる」,「かなりあてはまる」,「非常によくあてはまる」から評価するよう要求された.これら5つの感覚の強さは,それぞれ1ポイントから5ポイントのスコアとされた.階層的クラスター分析の結果は,連続夜勤時に疲労感の変動パターンが少なくとも3つ,つまりCluster A,Cluster B,Cluster Cの変動パターンの存在を示唆した.各Clusterの疲労訴え項目をもとに,Cluster A,Cluster B,Cluster Cはそれぞれ「脳賦活系の負担」,「局所筋あるいは中枢神経系の負担」,「情動的負担」を反映していると考えられた.Cluster AとCluster Cのスコアについては,夜勤回数の増加につれて有意に改善する傾向が観察された(それぞれF(11,99)=3.07, p <0.01,F(11,99)=3.37, p <0.01).一方,Cluster Bは夜勤回数に関らず,模擬夜勤時間の経過とともに悪化していた.これらの事から,連続夜勤時の疲労感の特徴的な変動は,さまざまな負担感覚の解離として表出する事が示唆された. (産衛誌2008; 50: 133-144)