年越し派遣村村民の健康:鶴ヶ野しのぶほか.帝京大学医学部衛生学公衆衛生学 ―わが国では雇用の流動化が進行している.2008年からの世界的不況により,2009年には派遣労働者をはじめとする非正規雇用者の大量解雇が予測されている.海外の先行研究では,不安定な雇用形態そのものが健康に影響する可能性が示唆されている.2008年の年末,職と住まいを失った労働者の緊急の避難所として「年越し派遣村」が東京に設営された.我々は2009年1月8~10日に東京都福祉保健局が行った健康相談及び健康診断に参加したが,そこでみられた村民の健康状況について報告する.健康相談に訪れた村民は89名であった(平均年齢48歳).身体症状としては多い順に,呼吸器症状(咳43%,痰36%),微熱(16.9%),筋骨格系症状(13.5%),皮膚症状(5.6%),消化器症状(3.4%),神経症状(3.4%)その他で,不安や不眠などの精神症状(10.1%)もみられた.個別の相談では,自覚症状があっても医療機関の受診が困難であったり治療が中断されているケースが多かった.また,1年以内に健康診断を受診した村民は23.8%(84名中)にとどまっていた.非正規雇用者の健康問題については十分認識されていないが,注目していく必要がある. (産衛誌2009; 51: 15-18)