香味成分およびカフェインを添加した歯磨剤の神経生理学的効果について:左達秀敏ほか.花王株式会社東京研究所―目的: これまでに我々は,歯磨き行為が疲労低減方法の一つとして,積極的休息に応用できることを報告している.そこで,本研究では,歯磨きの疲労低減効果を高めるために歯磨剤に着目した. 対象と方法: 香味成分およびカフェインを配合することによる効果をフリッカー値,事象関連電位P300および気分尺度を用いて検証した.まず,13名の健康な男女成人(男性6名,女性7名,平均年齢±標準偏差;28.2±6.5歳)にパソコン上で25分の計算課題を実施させた.その後本歯磨剤で歯磨きを行わせ,再度計算課題を実施させた. 結果: 香味成分・カフェインを配合した歯磨剤では,香味成分・カフェイン無配合歯磨剤に比べてP300頂点潜時が有意に短縮し( p <0.01),計算課題後でP300頂点潜時の延長が有意に抑制された( p <0.01).さらに,計算課題の正答率が増加傾向にあった( p <0.1).気分尺度においては,「全体的疲労」の低下傾向( p <0.1),「倦怠」の有意な低下( p <0.05),「爽快感」や「頭のすっきり感」の有意な増加(各 p <0.01, p <0.05)が認められた. 考察: 以上の結果から,歯磨剤に香味成分・カフェインを配合することで,歯磨剤の疲労低減方法としての有用性が示唆された. (産衛誌2010; 52: 172-181)