米国の公衆衛生大学院における産業医養成システムと日本の課題―ハーバード公衆衛生大学院専門職修士課程を通じて―:辻 洋志ほか.大阪医科大学衛生学・公衆衛生学教室―目的: 世界経済の急速なグローバル化により労働者を取り巻く環境は大きく変化してきている.わが国の労働安全衛生制度は,法律に準拠する形で戦後一貫して充実強化されてきた.しかし,社会の変化に伴い企業や労働者が産業医に求める内容も多様化し,対応を迫られている. 対象と方法: 米国は結果責任を伴う自主対応型の労働安全衛生制度を取っている.本稿では体系的なトレーニングを行い,変化する社会の需要に柔軟に応えることができる基礎を持つ産業医を養成する,米国の公衆衛生大学院のシステムを紹介する. 結果および考察: 今後の日本の労働安全衛生の維持向上を模索するに当たり,多様化する社会の需要に応えるには体系的トレーニングによる個々の産業医や関連職の技能の向上が不可欠であり,米国における公衆衛生大学院による産業医養成システムは一つの参考になると思われる. (産衛誌2011; 53: 33-38)