耐糖能異常をもつ男性勤労者における運動行動の変容ステージの特徴:高橋宏和ほか.トヨタ記念病院リハビリテーション科―目的: 糖尿病者と耐糖能異常者に対して,適切な運動行動の獲得と定着を支援するため,男性勤労者における糖尿病者と耐糖能異常者の運動行動変容ステージの特徴を食事行動やBMI,FBS,HbA1cとの関連から明らかにすることを目的とした. 対象・方法: 某職域男性従業員15,317人を対象とし,健康診断時に,「定期的な運動」についての変容ステージ5段階のいずれかを選択させた.健康診断記録から,運動行動と食事行動の変容ステージ,BMI,FBS,HbA1cを転記し,解析に利用した.この運動行動変容ステージに対して,食事行動変容ステージとBMI,FBS,HbA1cとの関連を検討した. 結果・考察: 1.運動行動が「実行期・維持期」の者の割合は,30-39歳で最も低く,年齢階級が高くなるに連れて増加していた.この30歳代での低下は,生活要因の影響を反映している可能性がある.2.耐糖能異常水準が高くなると,「実行期または維持期」にある者が増加していた.現行の管理・指導システムによる効果と考えられるが,今後継続的な検討が必要である.3.運動と食事行動の変容ステージは,どの年齢階級,どのHbA1c群においても相関関係がみられた.また,運動の習慣化は,どの年齢階級,どの耐糖能異常水準群においても食事行動の習慣化と強い関連を示していた.運動行動は,食事行動と協働した指導が重要であるが,両行動が習慣化していない糖代謝異常者に対する要因と支援法の検討がさらに必要である.4.運動行動の習慣化が,30-39歳以前でのFBS異常と全年齢群での肥満との関連が小さかったことから,運動行動の効果と限界を適切に指導し,運動習慣定着を継続させるような支援が重要である. 結論: 職域における糖尿病予防対策は,変容ステージの特徴を考慮し,食生活改善支援と協働しながら,運動行動の獲得・維持を促進するための独立した教育支援プログラムの提供が必要である. (産衛誌2011; 53: 153-161)