労働者のメンタルヘルスと行動特性の影響―共分散構造分析による因果モデルの検証―:山本美奈子ほか.筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻―目的: 労働者のメンタルヘルスの諸要因を明らかにし,また行動特性とメンタルヘルスとの因果関係を検証した. 対象と方法: 民間企業と地方自治体の労働組合に加入する労働者1,425名を対象に無記名自記式質問紙調査にて分析した. 結果: 労働者の行動特性とメンタルヘルス不調の関連を共分散構造分析により調べた.その結果,自己抑制型,対人依存型などの行動特性で示される他者報酬型自己イメージ変数は,直接メンタルヘルス不調に影響していることが示された.情緒的支援認知は,行動特性である他者報酬型自己イメージ変数とストレス源認知に直接影響し,メンタルヘルス不調に間接的に影響していることが示された.さらに,多母集団同時分析の結果,集団による違いは認められず,因果モデルは同じ構造を持っていることを確認した. 考察: 他者報酬型自己イメージは,メンタルヘルス不調に直接影響し,その影響力は最も大きかった.そのため,メンタルヘルス不調を予防するには,自己報酬型自己イメージにシフトしていくことが重要であると示唆された.さらに,職場の情緒的支援認知を高め,自己表現力や自己価値感を高める取り組みは,自己報酬型自己イメージ変容を促し,メンタルヘルス不調を予防する可能性が期待できると示唆された.