目的: 東京都内の健診機関のデータベースを用いて,心血管危険因子の有所見率の10年間の推移を検討した. 方法: 公益財団法人東京都予防医学協会が管理するデータベースから,2001–2011年度の定期健康診断の結果を分析した.各年度の事業所数は平均1,159ヶ所,各年度の受診者数は平均119,956人(男性73,842人,女性46,114人)であった.心血管危険因子として知られる1)肥満,2)高血圧,3)高コレステロール血症,4)糖尿病,5)喫煙について,各年度の有所見率を受診者全体と5歳年齢階級別に計算した. 結果: 男性において,2001年度の有所見率(粗率)は肥満26.9%,高血圧19.0%,高コレステロール血症22.7%,糖尿病6.9%,喫煙49.4%,2011年度の有所見率(粗率)は肥満28.5%,高血圧19.9%,高コレステロール血症26.6%,糖尿病5.9%,喫煙34.4%であった.年齢調整率で高コレステロール血症の上昇傾向を認め,年齢階級別にみると,50歳以上の高年齢層で肥満,高血圧,高コレステロール血症,糖尿病の有所見率が上昇した.女性において,2001年度の有所見率(粗率)は肥満10.4%,高血圧7.1%,高コレステロール血症19.1%,糖尿病1.7%,喫煙11.6%,2011年度の有所見率(粗率)は肥満11.6%,高血圧7.4%,高コレステロール血症16.7%,糖尿病1.7%,喫煙10.3%であった.年齢調整率で高コレステロール血症の低下傾向を認め,年齢階級別にみると,40–59歳で高コレステロール血症の有所見率が低下した.喫煙の有所見率は男女とも漸次的に低下した. 考察: 心血管危険因子の有所見率は総じて横ばいで推移しており,粗率・年齢調整率とも上昇したのは男性の高コレステロール血症のみであった.年齢階級別にみると,男性の50歳以上の高年齢層は心血管危険因子の有所見率が上昇しており,問題あるサブグループとして認められた.