目的: 疲労の回復は勤務中の手休めや休憩時にも生じるが,疲労が回復する大きな機会は勤務と勤務の間の生活場面にある.最近,労働者の疲労研究の領域において,どのような生活活動が疲労回復に効果的であるのかについて大きな関心が寄せられている.しかし,この種の研究は,一般集団を対象としたものが多く,勤務によって規則的な休日をとることのできない交代勤務看護師についての知見は限られている.本研究では,2連休時にどのような過ごし方をするのかの生活活動のタイプと,2交代か3交代かの交代勤務スケジュールの違いが,交代勤務看護師の疲労回復に及ぼす影響を検討した. 対象と方法: 某大学病院に勤務する看護師を対象に調査票を配布した.総配布数は523部,回収数は426部(回収率81.5%)であった.その内,女性,交代勤務者,記入漏れのない者を選定基準とした結果,それらを満たした390名が本研究の解析対象のデータとなった.適切な調査票がなかったため,独自に開発した看護師の生活活動尺度によって,回答者の2連休時の過ごし方について,外出志向,睡眠志向,在宅志向の3タイプに類型化した.疲労(疲労回復度,疲労度,バーンアウト度),労働条件(労働時間,残業時間,夜勤中の仮眠),睡眠(日勤前の睡眠時間,休日前の睡眠時間,眠気)を調査票によって測定した.すべてのデータは,生活活動タイプ(外出志向,睡眠志向,在宅志向)と交代勤務スケジュール(2交代,3交代)の2要因の混合モデル共分散分析によって解析した.なお,年代,経験年数,配偶者の有無,養育が必要な子供,病棟を共変量とした.また,どの要因が交代勤務看護師の疲労レベルの関連要因となるのかについて検討するために重回帰分析を行った. 結果: 外出志向タイプに分類された交代勤務看護師では,他の2タイプの者よりも,有意に早い疲労回復,低い疲労度,少ないバーンアウト症状が示された.それに対して,睡眠志向の交代勤務看護師では,有意に遅い回復を示していた.さらには,2交代(主に16時間夜勤)に比べ,逆循環の3交代に従事する睡眠志向タイプの者では,高い疲労度を示していた.加えて,重回帰分析の結果から,睡眠志向タイプ,労働時間の長さに対する負担感,仕事による不眠と夜勤中仮眠の長さが疲労指標と有意な関連性を示していた. 考察: 本研究より,交代勤務看護師の疲労度は生活活動のタイプ,とりわけ睡眠志向の生活活動と関連していることが示唆された.また,夜勤に関連する指標の中でも,夜勤中の仮眠の長さを確保することは疲労の回復により重要であることが示された.因果関係について今後のさらなる検討が必要ではあるが,本研究より,疲労回復を促進するための重要な要因として休日の適切な生活活動が示唆された.