ヒトがドクキノコである Clitocybe acromelalga (和名,ドクササコ)を食べると末端疼痛症が引き起こされる。その症状は1か月も続き,治療にはニコチン酸が有効であるとされる.著者らは,このドクササコの毒性発現機構を解明するためのモデル動物の作成に成功した.ナイアシン欠–トリプトファン制限食を投与してナイアシン欠乏としたラットにドクササコ添加食を24時間投与した.ヒトで見られた末端疼痛症に類似する症状は3日後に現れ始め,四肢の末端が赤く腫れ上がった.これは,ヒトにおけるドクササコの中毒を初めてWistar系ラットを使用して再現することができた報告である.ヒトの中毒症状に似た中毒を今までに齧歯類の研究で報告した例はないので,本実験で使用したナイアシン欠–トリプトファン制限食がこのモデル作成の成功の原因であると思われる.