旅館の調理場および宴会場において生鮮魚介類の冷却に用いられている食卓用ドライアイス装置(ドーム型,帽子型および三脚型保冷器の3種類)による腸炎ビブリオの増殖抑制が可能であるか調査した.1.8% NaClを含むTSA平板培地および生鮮魚介類(イカ,アマエビおよびハマチの各フィレー)に腸炎ビブリオ(O3 : K6, TDH陽性株)を4~5 log CFU/試料接種して,室温 25℃ 下に放置した場合,本菌は4時間で1.0~2.8オーダー増加したが,各保冷器を用いた場合,3~4時間以内では著しい菌数増加はみられず,増殖抑制効果が確認された.各保冷器内の温度は 10℃ 以下に80~135分間保持されていたが,高CO2濃度の保持時間が短かったことから(0~75分間),増殖抑制効果は主に冷却機能によるものであったと思われた.これらの結果より,食卓用ドライアイス装置は,旅館の調理場および宴会場などの外食産業の現場において腸炎ビブリオ食中毒防止に有効であることが示された.