一般に食品内部はその表面に比べ,外気と接触する機会が非常に少ないと考えられる.今回,非常に少量の限られた空気しか含まない密封パウチ食品(マッシュポテト)内部での大腸菌増殖を調べ,私たちの開発した増殖モデルを用いて解析した.その結果,定常温度下におけるパウチ内での増殖曲線はS字状となり,その速度定数およびラグタイムの温度依存性を明らかにした.パウチ内での増殖挙動は,多量の空気が存在するガラスビン内での増殖,さらにこれまで報告した同一温度下の液体培地中および寒天平板上での増殖とも一致した.以上の結果から,本菌の増殖挙動は栄養が豊富であれば各種環境条件下でほぼ一致することが明らかとなった.