食中毒関連検査において,食品からノロウイルス(NV)が検出される事例は非常に少ない.これは,食品成分由来の夾雑物の影響や,微量に含まれるNVを効率よく回収することが難しいためと考えられる.今回筆者らは,細菌( Klebsiella oxytoca )を利用して食品成分由来の夾雑物を分解,消化する前処理法を考案し,有用性の検証を試みた.NVを添加したカキ乳剤18検体,他の食品乳剤15検体を用いて,添加したNVをリアルタイムPCRによって検出し,その回収率を求めた.その結果,厚生労働省通知による処理法ではカキからの平均回収率はGI/8で0.3%, GII/13で0.5%, 他の食品はそれぞれ1.9%, 7.9%であったのに対し,細菌を用いた前処理を行った場合ではカキは8.6%, 11.6%, 他の食品では13.9%, 19.6%に上昇した.以上の検査結果から,細菌を利用した前処理法は食品からのNV検出のための有効な手法であると考えられた.